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ムソク外伝 月の章 25

「兄上っ!!」


「ムソク様っ!!」



ムソクは、ゆっくりと顔をあげた





「バイファ・・・そなた、兄上を知っておるのか?」

「はい・・・以前私たちを助けて下さった方でございます」




ウォルヤの妻がバイファだったとは・・・


運命の糸は、絡まりあいながらも、やがて3人を結び付けていた・・・




「間に合って良かった・・・」

「兄上・・・」






離れていても切れない絆

互いの想いは秘めたまま、見えない絆は繋がっていた





目の前にいるのは・・・

ウォルヤ・・・

5年の間、ウォルヤは死んだと自分に言い聞かせながらも、何処かで生きているのではと淡い希望を抱いていた

そして今、懐かしいその声で「兄上」と呼んでくれた

私は、それだけで充分だ・・・

目の前にいる妻と子

それがそなたの新しい幸せな姿ならば

私はこの思い伝えずにいよう・・・








兄上・・・

ずっと貴方をお慕いしていたはずなのに

時の流れは、無残にも私の記憶の中から貴方を消してしまっていた

でも、今

もう一度私の心は、貴方への思いで満たされています

兄上・・・

会えて良かった・・・

この命、消えずにいて良かった・・・









ムソク様だったのですね・・・

昌珉様が高熱でうなされている間中、ずっと、うわ言で呼んでいました

きっと、昌珉様の大切な方だろうと思っておりましたが・・・

5年の間、夫婦として暮らしてきたけれど

私には入り込めなかった昌珉様の心を埋め尽くしていたのは、貴方様だったのですね





それぞれの思いが交差する中

バイファは、ムソクに向かい口を開いた




「ムソク様、お願いがございます」

「願い・・・?」

「昌珉様を連れて、お逃げ下さい」


バイファの言葉を聞き、ムソクとウォルヤは驚いた

「何を申すのだ!そなたとウォルも共に」

「今から、ウォルを連れて逃げ切れるとお思いですか?」

「バイファ殿、私もいます。私とウォルヤ、いや、昌珉が交互に背負えば・・・」

「捕まればお二人は確実に殺されます。それに、夜更けになればなるほど、外の気温は下がります。捕まらずとも、子供には危険な環境となりましょう。先程の将軍が申された通り、おそらく私とウォルには危害は加えぬかと・・・ならば、私達は此処に残った方が安全だと思います」

「バイファ、私はそなた達を守ると決めたのだ。私の大切な妻と子を・・・」






妻と子・・・

違う・・・

昌珉様・・・違うのです・・・




「違う・・・違います・・・」

首を振りながら、バイファはしきりに呟いた

その両目からは大粒の涙が零れ落ちている



「何が違うのだ!そなた達は・・・」

「ウォルは・・・」

「え?」

「ウォルは・・・貴方様の子供ではございません!!」


思いもかけないバイファの言葉にウォルヤは絶句した


「ウォルは・・・私の本当の夫、リンチェイの子でございます」


そして、バイファは静かに話し始めた・・・




5年前、出兵前夜

もう生きては戻れぬ夫との最後の夜
私達は契りを結びました・・・



その後、昌珉様の看病をするうちに身体の異変を覚え、ウォルを身ごもっていることが分かったのです

子もいる夫婦として振舞った方が、世間を欺ける

そう思った私は、昌珉様が記憶を失っておられたのを利用し、この子を昌珉様の子として育てる事にいたしました

でも、夫婦として暮らしていても、私は夫リンチェイを忘れる事が出来ませんでした

幸いにして、昌珉様は男としての役目を果たす事が出来ない身体となっておられた為、
私はリンチェイへの操を立てることが出来ました。でも、昌珉様を欺いてきた事は、ずっと私の心の中で重荷になっておりました



昌珉様が此処を出て、ムソク様とお逃げになれば、私の役目も終わります

どうか・・・私の心を解放していただきたいのです


何時しかリンチェイへの想いが昌珉に移り変わっていた事

そして、昌珉がずっと思い続けていた人が現れた今

これ以上自分が昌珉の妻で居続ける事がどんなに辛い事か、バイファには分かっていた

ならば、この思いを偽ってでも身を退かねばと決心したバイファだった




私は

そのような辛い思いまでさせていたのか

すまない・・・バイファ・・・

死した者のみならず

生ける者の想いまで背負ったこの命

必ず守り通して見せよう



昌珉は、バイファの真の思いも知らないままに、ムソクと共に明国を後にする事を決心したのだった





うう・・・

倒れた兵士がうめき声を上げ始めた




「兵士たちが気付く前に早くっ!」



ウォルヤはバイファとウォルを抱きしめた

「バイファ・・・今までありがとう・・・」

「いえ、此処まで一緒に来れて幸せでした」

「ウォル、そなたは男だ。父が居なくても母を守るのだぞ!」

「父さま、どこかへいかれるのですか?」

「父さまは、遠いところへ行かれるのです。さ、行ってらっしゃいませを言いなさい」

「父さま、いってらっしゃい。はやくかえってきてくださいね」



涙を隠したままウォルヤは頷き、ウォルの頭を撫でた・・・


「さ・・・早く・・・」




バイファに促がされるまま、ウォルヤとムソクは家を出た



そして、5年の間暮らしてきたその家に向かい、ウォルヤは深々と頭を下げた・・・




ポタッ・・・ポタッ・・・

溢れる涙は、ウォルヤの足元を濡らしていく・・・


なかなか頭をあげようとしないウォルヤに向かってムソクは言った



「行こう・・・今度は私がそなたの命を守る番だ・・・」




やがて二つの陰は、深深と冷えこむ夜の闇に消えていった・・・







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