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ホミン小説

ムソク外伝 月の章 6

「母上!おかえりなさい!」


バイファが家に戻ると、待ち構えていたように子供が飛び出してきた


「ただいま。ちゃんとお留守番出来ましたか?」

子犬のように飛びついてくる我が子を抱きかかえバイファは頬ずりをした



「ははは・・・やはり、私より母の方が良いか」

「あ、リンチェイ様。只今戻りました」

「連日街まで出かけて疲れたであろう。簡単ではあるが、食事の準備をしておいた。さ、中へ・・・・」


バイファは夫リンチェイに促され、家の中へと入った


「今日は豆腐の辛い鍋でございますね。」

「うむ・・・これしか出来ぬがな」

「いいえ、貴方のお気持ちがこもっておりますもの。充分ですわ。私の方こそ、昨日済ませば良かったのに、どうしても月命日に拘り、連日家を空けてしまい申し訳ありません」

「父上の月命日。町へ下りたついでで済ますわけにも行くまい。さ、鍋を暖めなおすゆえ、そなたも着替えてくるがよい」


リンチェイの言葉に甘え、バイファは着物を着替えに部屋へと向かった




着替えながら、バイファはさっきの事を思い出した

「そうそう、今日屋敷の跡地で、昨日私たちを助けて下さった旅の方にお会いしました」

「屋敷跡でか?確か朝鮮国からの旅人に見えたと申しておったな」

「はい。自国の屋敷に出入りしていた知人が、やはりあの乱で命を落とされたとか」

「明国の知人が、朝鮮国に出入りしていた?その方は朝鮮国の高官か?」

「たいそう良い身なりでございましたゆえ、そうかと・・・」


着替えを済ませたバイファは部屋から出てきて話を続けた


「ムソク様は・・・」

「ムソク・・・?」

「はい・・・あの方の名前でございます。ムソク様と亡くなられた方は、かなり親しい関係にあったようで、生き残った者はいなかったのかとお尋ねになられて・・・・」

そこまで言うと、バイファは夫リンチェイが何かを考え込んでいるのに気が付いた


「どうかなさいましたか?」

「いや・・・ムソクという名前、何処かで聞いたような・・・」

「この国の名前ではありませぬゆえ、思い違いでしょう。それより、おいしそうな匂いがして参りました。いただきましょう。ウォルもこちらへいらっしゃい」


話の腰を折るように、バイファはわが子を呼び
3人は暖かな鍋を囲みながら食事を始めた










その夜





ムソクと言う名前が頭から離れずに、
なかなか寝付く事が出来ないリンチェイは家の外へと出た

おりしも今宵は満月

空に浮ぶ大きな月を見上げ

何故か聞き覚えのある「ムソク」という名前に想いを馳せるのだった・・・・





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