fc2ブログ

THE POLE★STAR

ホミン小説

Hide & Seek 最終話

ハイシー69話と連投してます

 

先にそちらから読んでね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タクシーに乗り込んだユノは、さっきと同じように運転手に孤児院の事を聞いたが、運転手は知らないと答えた

 

だが、運転手はルームミラーでユノの姿を確認すると意外な事を聞いてきた

 

 

「お客さんもメンバーですか?」

 

「メンバー?何の事ですか?」

 

 

すると運転手は、まるで誤魔化すかの様に車内に貼ってあるステッカーのメンバー登録の事だと言った

 

 

「メンバー登録をしておくと、タクシーの利用料金にポイントがついて、次回から支払いの時に使えるんですよ。タクシー会社はどこも競走ですからね」

 

 

何となく腑に落ちない運転手の言葉だったが、それ以上運転手はメンバーについて触れること無く、他愛も無い会話を続けながら車を走らせ続けた

 

 

 

 

やがて、車は軍の施設がある近くまでやってきた

 

 

「ここから先はただ山道が続くだけですけど、どうします?」

 

「この先に人は?」

 

「隣の市まではずっと山が続いてるだけですよ」

 

 

やはり孤児院は無いのか…

 

ミニョクは、俺に場所を間違えて言ったのか…いや、確かに楊州市と言ったはずだ

 

 

その時、降りていけそうな渓流がユノの目に飛び込んできた

 

 

ユノは、運転手に少し待つように頼むと、杖をつきながら、川べりに降りていった

 

 

 

そして、ポケットから小さくなったミニョクの欠片を取り出し暫く見つめていたが、やがて清らかな水の中にそっと置いた。

 

 

 


ミニョク…

 

お前が育ったここの空気と水の中で、ゆっくりおやすみ…

 


 

 

 

 

 

車に戻る前に、ユノは飲み物を買おうと駐車場の前の小さな店に立ち寄った

 

ショーケースから自分と運転手の飲み物を取り出しレジに行くと、そこには1人の老婆が座っていた

 

 

「いらっしゃい。お兄さんも面会かい?」

 

「面会?」

 

「ここは軍の施設に近いからね。面会の人がたまに寄ってくれるんだよ」

 

「ここは、長いんですか?」

 

「もうここで40年ほど商売をしてるよ。でも、最近はコンビニってのかい?あれが出来てからは、うちみたいな小さな店は売上がガタ落ちでね…たまに寄ってくれるお兄さんみたいな人に助けてもらってるよ」

 

 

40年もここで商売をしてる?

 

もしかして、この人なら知っているかもしれない?

 

 

ユノは再び孤児院の事を聞いてみる事にした

 

 

「孤児院?こんな山奥にそんな物はないよ。だだね、この10年ほどかね、時々子供の姿は見かけるようになったね。職業軍人さんの子供なのか、兵役中の兵隊さんの子供かはわからんがね…にしても、最近の人は裕福になったもんだ。みんなピカピカの高級車にのって面会に来るんだからね…」

 

 

面会に来るのに高級車?

 

上級の幹部ならわかるが…一般の軍人の皆が皆高級車に乗れるわけが無い

 

この人は何を言ってるんだ?

 

 

「そう言えば、来るのは殆どが男の子なんだけどね、最近の子はみんな綺麗な顔をしてるんだね…みんな女の子みたいな顔してるよ。女の子の数が減ってるのかね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を待ってた?」

 

チャンミンは廊下で会ったユンミンの言葉に戸惑いを隠せなかった
 

「はい。」

 

「飲みの誘いか?そう言えば、まだお前には借りを返してなかったよな」

 

しかしユンミンはチャンミンの冗談にも耳を貸さず、真顔で話し始めた

 

 

「実は、チャンミンさんと組んだ最後の殺人事件ですが」

 

 

 

たしか、ホテルで男性が殺害された事件だったな…何故か証拠となるものが全て消えてしまっていた事件

 

 

「あの時の被害者の事で意外な事がわかったといいましたよね」

 

「ああ…」

 

「チャンミンさん、今度は俺に力を貸してもらえませんか?」

 

 

あたりをはばかる様に小声で囁くユンミンの様子に、チャンミンはユンミンが何か重大な事実を握っているのを察した

 

 

「刑事課に戻って、俺とあの事件を解決して欲しいんです。」

 

「すまん、ユンミン。俺は刑事課には戻らない。麻薬捜査課で、ユノが戻ってくるのを待つんだ」

 

「チャンミンさん、あの事件にはとんでもない事実が隠されてるかも知れないんだ。俺一人では手に負えないくらいの。」

 

「でも、刑事課には他にも信頼出来る刑事がいるだろう?」

 

「確かにチャンミンさんの言う通りです。ただ、もし俺が掴んだ情報が事実なら、いくら信頼出来ると言っても、迂闊に人には言えない内容なんです」

 

「ユンミン、お前、一体何を知ってるんだ?」

 

 

するとユンミンはチャンミンの耳元で小さな声で囁いた

 

 

「あの事件の裏には…人身売買と性的虐待が隠されているかも知れないんです。しかも、そこに政府高官や要人が絡んでいるかもしれない」

 

 

 

 

ミニョクの育った場所で、ミニョクの隠されていた真実に近付いて行くユノ

 

 

 

そして、ミニョクが殺した男だと知らずにミニョクの背後にあった組織に近づいていくチャンミン

 

 

 

 

離れた場所で結ばれた糸を手繰り寄せる様に、運命は再びユノとチャンミンを巡り逢わそうとしていた…

 


 

 

                                       to be continued

 

 


 ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村


スポンサーサイト



Hide & Seek | コメント:0 | トラックバック:0 |

Hide & Seek 69

翌日、俺はカン課長に呼ばれユノが送ってきたと言う銃と手錠、警察官の身分証を見せられた


 

 

「ユノは、警察を辞めるって事ですか?」

 

「多分そう言う意味だろう」

 

「課長はそれを受理するおつもりで?」

 

「幸いにも送ってきた物の中には退職願が入っていなかった。はっきりとした意思が汲み取れない限り、勝手に退職させるわけにはいかんだろう。暫くは休職という形にしておこうと思ってる」

 

「ありがとうございます」

 

「何も君が礼を言うことではあるまい。それとな…」

 

カン課長は一瞬ためらいがちに視線を落としたが、やがてゆっくりとチャンミンの目を見つめて言った

 

 

「さっき鑑識から連絡があってな…漢江からチソンの遺体が見つかった」

 

 

 

チソンが…

 

やはり、劉から逃げ切ることは出来なかったのか…

 

 

「遺体はかなりの損傷だったらしい。」

 

課長は窓の外に目をやりながら、悲痛な思いを隠すように呟いた

 

 

「ところで、ユノとはまだ連絡が取れないのか?」

 

「はい」

 

「君は、これからどうする?ユノもいないし、あんな事件の後だ。希望するなら他の部署に移動しても構わんよ」

 

「俺は…ここでユノを待とうと思います」

 

「いいのか?帰ってくる保証なんてどこにも無いんだぞ」

 

「構いません…俺は…ユノのバディですから」

 


 


 

 

 

 

課長の部屋を出ると、廊下にはユンミンが立っていた

 

 

「チャンミンさん、怪我はどうですか?」

 

「俺はかすり傷だったから、もうすっかり良くなったよ」

 

「良かった…」

 

「ところで、お前こんなとこで何してたんだ?」

 

「チャンミンさんを待ってたんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京畿道 楊州市

 

 

韓国北部に位置する、自然に囲まれた静かな都市

 

電車から降り立った男は、杖をつきながらゆっくりとあたりの景色を見渡した

 

 

 

 

ミニョク…

 

帰ってきたよ

 

お前の育った場所に

 

 

 

 

ユノは、ポケットに入れた小さな箱をそっと握りしめた

 

 

 

 

 

「僕は京畿道の楊州市ってとこで育ったんだ」

 

「随分田舎だな」

 

「ユノだって光州じゃん!おんなじ田舎者だ」

 

「両親は今でもそこに?」

 

「ううん…僕は施設で育ったから…」

 

 

 

寂しげなミニョクの笑顔が脳裏に浮かぶ

 

 

 

はっきり場所を調べてきたわけじゃない

 

ただ、ミニョクが育ったと言う地に降り立ち、遺骨の一部を懐かしい場所に戻してやりたかった

 

そして、ミニョクが暮らしていたという場所を見てみたかった

 

 

 

 

駅を出ると、ユノは案内所へ向かい、軍の師団がある先の、山に囲まれた孤児院の住所を聞いた

 

だが、意外な事に窓口の女性はその存在を知らなかった

 

 

「ちょっと待って下さいね。今役所に問い合せますから」

 

 

女性は、暫く電話でやり取りをしていたが、やがてユノの方を見て首を降った

 

 

「孤児院は、そんな山奥にはないそうですよ」

 

「でも、確かに俺の知り合いは楊州の山奥の孤児院で育ったと言いましたが」

 

「そうおっしゃられても、今ちゃんと確認したんです。市を間違ってらっしゃるんじゃ?」

 

 

 

ミニョクは確かに楊州市と言っていた

 

そして、軍の施設よりももっと先の山奥で育ったとも言っていた

 

俺に嘘をついたのか?

 

もしそうだとしたら何の為に?

 

 

 

ユノは当時のミニョクの様子を思い出した

 

 

あの時のミニョクは、とても嘘をついているようには思えなかった

 

ただ…

 

あまり詳しく話そうとはしなかったのは確かだ

 

 

 

 

とりあえず、近くまで行ってみよう

 

もしも場所が見つからなくても、師団の近くまで行けば何かわかるかもしれない

 

 

ユノは案内所を出るとタクシーに乗り込み軍の施設の近くまでと行き先を告げた

 

 


 


 

 

 ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村


Hide & Seek | コメント:0 | トラックバック:0 |

Hide & Seek 68

その後、駆けつけた救急隊による心肺蘇生の措置の甲斐も無く、ミニョクは息を引き取った


 

 

ユノとチャンミンは、そのまま警察病院に運ばれ、ユノは銃弾の摘出手術を受けた

 

幸いにしてチャンミンの傷は軽いものだった為、手当を受けた後一晩だけ入院し翌日には退院することが出来た

 

 

 

それから毎日、チャンミンはユノの病室に通ったが、足に受けた傷同様に心にも大きな傷を負ったユノは、再び心を閉ざしてしまった

 

 

 

 

それから一ヶ月…

 

ユノの傷は回復したものの、銃弾によって傷ついた筋肉は、ユノの歩行を困難にしていた

 

そんなユノのリハビリに付き合うべく、チャンミンは毎日病院へと通っていたある日の事…

 

 

 

いつもの様に病室に行くと、ベッドの周りは綺麗に片付けられ、ユノの気配がなくなっていた

 

 

 

「すいません」

 

「はい」

 

「あの、206のチョン・ユノは?」

 

「ああ、今朝退院されましたよ」

 

「退院した?だってまだリハビリの途中じゃ…」

 

「それがね、今朝急にユノさんから退院させてくれと言われて、ドクターがまだリハビリが必要だと説得したんだけど、これ以上入院してリハビリを続けても以前の様に歩いたり走ったりする事が出来ないと知ったユノさんは、無理やり退院を迫ったのよ。外傷は完治してるから、ドクターも自宅の近くの病院でリハビリを続ける事を条件に渋々退院の許可を出したの」

 

 

 

ナースの話を聞き、チャンミンはすぐにユノのマンションに向かった

 

階段を上りユノの部屋の前に行くと、そこには2人の男性がユノの部屋を開けようとしている

 

 

「あなた達、何してるんですか?」

 

「貴方は?」

 

「私は、ユノの同僚です」

 

「同僚?」

 

 

すると、1人の男性がチャンミンに向かって言った

 

 

「私はこのマンションのオーナーだけど、困るんだよね…」

 

 

 

 

オーナーの話によると、退院したユノは一度部屋に立ち寄った後、管理人室に行き今月いっぱいで契約を解除する旨を告げたらしい

 

そう言うことはオーナーか仲介業者に話して欲しいと管理人が言うのも聞かず、ユノは今月分の家賃と、部屋の中の物を全て処分してもらう為のお金が入った封筒を管理人に押し付け出ていったと言う

 

 

「電話をしても繋がらないし、勤務先に連絡したら入院してるって言われるし、困ってたんですよ」

 

 

チャンミンはすぐさまユノのスマホに電話をしてみた

 

 

だが、「この番号は現在使われておりません」のメッセージが流れるのみだった

 

 

 

 

「とにかくあなたが来てくれて良かった。全て処分と言われても、あとでクレームつけられたら、こちらも迷惑なんで」

 

 

オーナーは手にした鍵をチャンミンに渡すと、後の事は頼みますと言いながら管理人と共に去って行った

 

 

 

 

その場に残されたチャンミンは、渡された鍵でユノの部屋のドアを開けた

 

 

 

真っ暗な部屋の中

 

灯りを点けると、部屋の中は初めてこの部屋を訪れた時と同じく脱ぎ散らかした服が散乱している

 

 

 

あの日…

 

ミニョクの事でユノが俺のマンションにやってきた日から

 

この部屋の時間は止まったままなんだな…

 

 

 

チャンミンはリビングのソファーに座ると、放置されたシャツを手に取った

 

 

 

「ふふっ…ユノの匂いだ…」

 

 

かすかに残るコロンの香りは、ユノがいつもつけていたものだった

 

 

チャンミンは、思わずユノのシャツに顔を埋めた

 

 

 

ユノ…

 

今どこにいるんだ…

 

 

あんな辛い思いを抱えたまま

 

どこへ消えたんだよ…

 

 

1人で抱えるなよ…

 

約束したじゃないか…

 

 

俺がユノを守る

 

だから、ユノも俺を守ってくれって

 

 

俺はあの時、ユノがいたからミニョクに守ってもらえたんだ

 

ユノに守ってもらったも同然なんだ

 

だから今度は、俺がユノを守る番なのに…

 

 

 

腕の中でミニョクが息絶えた時のユノを思い出すと、切なさがこみ上げてくる

 


 

 

 

 

ユノ…

 

貴方の悲しみや苦しみを

 

俺にも背負わせてくれよ…

 

 

俺を…置いていくなよ…

 

 


 


 

 

 

 

 

 ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村


Hide & Seek | コメント:0 | トラックバック:0 |

Hide & Seek 66

チャンミンを撃ち殺してっ!


 


 


そう叫んだミニョクはチャンミンを指差して言った


 


 


「アンタの勝ちだよ、チャンミン。ユノの心はもう僕には戻ってこない。僕からユノを奪って嬉しいだろ?。僕はそんなアンタが憎いんだ。そして僕は今やっと分かったよ。僕の元から離れたユノにとって一番のお仕置きは、パパが僕にしようとした事、目の前で大切な人が死ぬ所を見せる事だってね」


 


「待てっ、ミニョクっ!。チャンミンとはお前が思っているような関係じゃないっ!」


 


「そんな事、もうどうでも良いんだ!僕は・・・チャンミンに消えて欲しいんだよっ!チャンミンが現れてから、僕とユノの関係がおかしくなったんだ。コイツさえいなければ、全てが上手く行ったはずなんだっ!」


 


 


 


 


すると、チソンはクックックッと笑い始めた


 


 


 


「面白い事になってきたな。そうだな・・・このままチャンミンを消さないでいると後々面倒な事になりそうだしな。ミニョクの言う通り消えてもらおうか・・・」


 


「やめろっ!!!チャンミンに手を出すなっ!」


 


「ならユノ、貴方がコイツを助ければいいじゃない」


 


 


 


ミニョク・・・なんでそんな事を・・・


 


この状況でどうやって助けるって言うんだ・・・


 


 


 


「貴方にとって、唯一無二の大切な存在なんでしょ?なのに貴方のせいで若い命を散らせる事になったんだ。これは全部罰なんだよ。僕を裏切ったユノとチャンミンへの罰なんだっ!」


 


 


 


ミニョクは、口元に薄ら笑いを浮かべながらユノとチャンミンを交互に見た。


 


だがユノは、その瞳の奥に隠された深い悲しみと何かを覚悟したようなミニョクの心を見逃さなかった


 


 


 


 


 


 


「さあ、ミニョク。そろそろいいか?チャンミンが死んで嘆き悲しむユノの姿を堪能する時間も必要だろう」


 


 


チソンはユノに向けていた銃口をチャンミンに向けた


 


 


「怖いか?チャンミン。恨むのならユノを恨むんだな」


 


 


「頼むっ!やめてくれっ!チャンミンに手を出さないでくれっ!ミニョク、チソンを止めてくれっ!」


 


「うるさいっ!」


 


 


ミニョク…


 


 


「僕の苦しみを味わうが良い…大切な人が手の届かない所へと行ってしまう苦しみを…大切な人への思いが届かない苦しみを…そして…」


 


 


そこまで言うと、ミニョクは唇を噛んで俯いた


 


 


 「大切な人との…別れの悲しみを…」


 


 


 


「ミニョク!チャンミンを撃たせないでくれっ!頼む!俺に出来ることは何でもするからっ!」


 


「あはははっ!ユノ、今頃そんな事言ってももう遅いんだよっ!さあチソン、僕が合図したらその両手に持った銃をチャンミンにぶっぱなしてっ!」


 


「わかった」


 


「今から三つ数える。そして、僕が撃てと言ったらチャンミンを確実に撃ち殺すんだっ!」


 


 


やめろ…


 


ミニョク…


 


 


 


「さん…」


 


 


ミニョクっ!やめてくれっ!


 


 


 


「に…」


 


 


ミニョクっ!頼むっ!何でもするから、チャンミンだけは助けてくれっ!


 


 


「いち…」


 


 


チソンの人差し指が、引き金に添えられた


 


 


 


 


ダメだ!撃つなっ!


 


 


 


 


 


「撃てっ!」


 


 


 


 


 


パンッ!


 


 


パンッ!


 


 


 


二つの銃声と共に、チャンミン目掛けて銃弾が放たれた!


 


 


 


 


 


 


 


チャンミナぁぁぁぁぁぁっ!!!


 


 


 


Hide & Seek | コメント:0 | トラックバック:0 |

Hide & Seek 65

チャンミンは緊張しながら、ドアが開くのを待っていた


 

 

 

 

 

 

カチャ…

 

 

鍵の開く音が聞こえ、ドアが静かに開かれると、そこから顔を覗かせたのは意外な人物だった

 

 

 

 

「チソンさん?」

 

 

 

「しっ!声を出すな。ユノが大変なんだ」

 

 

 

ユノが…?

 

じゃあユノはチソンさんにミニョクの事を話したのか?

 

 

 

「とにかく中に入れ」

 

 

 

チャンミンは、チソンに言われるがままドアの中へと足を踏み入れた

 

 

 

だが、次の瞬間

 

 

 

 

カチャリと何かが外れる音が聞こえると同時に、チャンミンは後頭部に硬い物を押し当てられた

 

 

 

「動くとお前の脳みそが飛びたずぜ」

 

 

チソンさん?

 

 

「まずは手錠をかけてもらおうか」

 

 

 

 

チソンは、上着から手錠を取り出すと、チャンミンに渡した

 

 

「これは…どういう事なんだ?ユノはどうしたっ!」

 

「いいから先に手錠をかけろ。さもないと、本当にお前の頭に穴があくぜ」

 

 

 

 

チャンミンは、自らの両手首に手錠をかけると、信じられない様子でチソンを見つめた

 

 

 

 

「よし。それでいい。それと…」

 

チソンはチャンミンのジャケットの中に手を入れ、持っていた銃を取り出した。

 

 

「こいつは預かっておかないとな…」

 

「チソン、説明しろ。これは一体何の真似だ!ユノはどこにいるっ!」

 

「聞きたいのはこっちの方だ。何でお前がこんな所に現れたんだ?」

 

「俺は、ミニョクを助けに来たんだ」

 

「ミニョクを?そうか。さっきまで情報室にこもって調べていたのは取引の情報じゃなく、ミニョクの居場所だったのか」

 

 

そう言うとチソンは笑い出した

 

 

「何がおかしいっ!」

 

「黒豹と恐れられたユノと、公安部のエリートがマヌケ面して俺に捕まった。笑わずにいられるかよ」

 

 

 

俺が公安部の人間って事まで知ってる?

 

チソンは一体何者なんだ…?

 

 

 

 

「まあ良い。本来ならばすぐに撃ち殺してる所だが、お前にはひと仕事やってもらおう。さあ、リビングまで歩け」

 

 

 

 

銃を突きつけられながらリビングまで歩いて行くと、そこには体を横たえたユノと、その横で泣きながらユノの太ももをタオルで縛っているミニョクの姿があった

 

 

「ユノっ!」

 

 

チャンミンは咄嗟にユノの傍へ駆け寄ろうとした。

 

だが、その時

 

 

「勝手に動くなと言っただろう!」

 

 

 

 

チソンの声と共に、チャンミンの肩先を銃弾がかすめた

 

 

「うあっ!」

 

 

叫び声と共に、スーツの肩先を真っ赤な血が染め、チャンミンはその場に倒れ込んだ

 

 

 

「チャンミンっ!チソンっ…貴様っ!」

 

「頭が吹っ飛ばなかっただけでも幸運だと思えっ!」

 

 

そう言うとチソンは、さっき奪ったチャンミンの銃を取り出し、ユノとチャンミン、それぞれに向けた

 

 

 

「やめろっ!チャンミンには関係ないっ!」

 

「ははは…確かにそうだな。ミニョクの目の前でお前を殺せと言うボスの命令には関係ない…」

 

 

 

ミニョクの目の前でユノを殺す?

 

ボスの命令?

 

 

チソンは…

 

劉の手下?

 

 

 

 

「だがな、ミニョクがお前をかばっている限り、俺はお前を殺せない」

 

 

その言葉に、ミニョクは再び自分の体を盾にしてユノの前に立ち塞がった

 

 

「そうだよ。ユノは殺させないっ!何があっても、僕がユノを守るんだっ!」

 

 

ミニョクの姿に、チソンはニヤリと笑った

 

 

「なあ、ユノ。ここで一つ取引をしないか?」

 

「何の取引だ!」

 

「ミニョクにお前の前から退くように言ってくれないか?そうすれば、チャンミンは助けてやる」

 

「嫌だっ!僕は死んでもユノを守るんだ!僕は絶対ここを動かないっ!」

 

 

 

「本当に…チャンミンを助けてくれるのか?」

 

「俺のミッションは、お前をミニョクの前で殺す事だ。このままじゃ、無駄に時間だけが過ぎていく。俺もさっさと仕事を終わらせたいんでな」

 

 

「ダメだユノっ!俺はどうなっても構わない!ミニョク!ユノを守ってくれっ!頼むっ!」

 

 

チャンミンの悲痛な叫び声に、ユノは目の前にいるミニョクを見つめた

 

 

「ミニョク…」

 

「僕はここを退かないっ!チソンは僕を殺せないんだ!だから僕は…」

 

「ミニョク…もういい…」

 

「ダメだっ!ユノっ!」

 

「頼む…もうこれ以上…誰の血も流したくないんだ…」

 

「嫌だっ!」

 

 

ミニョクはユノに抱きついた

 

 

「僕のユノ…僕の大切な人だから…僕が命を掛けて守るんだ…」

 

 

「ミニョク…チャンミンは、俺たちの事には関係ない。これは、俺自身の問題なんだ」

 

 

「ユノっ!俺はどうなっても構わない!ミニョクっ!頼む!絶対にユノを守れっ!」

 

「チャンミンっ!お前を死なせるわけにはいかないっ!お前は俺にとって、やっと…」

 

「チソン!先に殺りたければやれっ!俺は死ぬ事なんて怖くない」

 

 

 

「ミニョク…」

 

ふと気がつくと、ユノは唇をギュッと噛んで俯きながら肩を震わせていた

 

 

「ユノ…?」

 

 

「助けてくれ…頼む…チャンミンを…」

 

 

その頬には一筋の涙が伝っていた

 

 

「テウンの事でずっと閉ざしていた俺の心に寄り添い、知らず知らずのうちに癒してくれたのはチャンミンだった…人を遠ざけ、笑う事を忘れた俺に、心が触れ合う温かさを思い出させてくれたのもチャンミンだった…」

 

 

ユノ…

 

僕だって貴方の傷ついた心を、体で癒してあげたじゃない…

 

 

「もう誰とも関わるまいと思っていたのに、人を信じるって事の心強さを思い出させてくれたのもチャンミンだ…」

 

 

 

 

違う…違うよ、ユノ…

 

僕はいつだって、貴方の側にいたじゃない

 

貴方の心の隙間を埋めていたのは僕じゃないか…

 

 

 

「そんなチャンミンは…俺にとって唯一無二の存在なんだ…俺が心から大切に思っているバディなんだ。だから…頼む…俺の側から離れてくれ…」

 

 

 

嫌だよ…

 

何でそんな事いうの?

 

じゃあ、僕は

 

ユノにとっては何だったの?

 

いつも、貴方の為だけに生きてきた

 

チャンミンよりも長く貴方の側にいたはずなのに

 

貴方はチャンミンに心を動かされたの…?

 

 

 

「ユノ…僕よりチャンミンの方が大切なの…?」

 

 

ミニョクの問いかけに、ユノは何も答えなかった

 

 

 

愛されてないのは知ってた…

 

でも、僕より後に知り合ったチャンミンの方が大切なの…?

 

どんなに貴方の事を想っていても、貴方はチャンミンしか見てないの・・・?

 

 


 


 

ミニョクの瞳から涙が溢れ出てきた

 

 

 

 

 

 

ふふっ…

 

そうだよね…

 

僕だけのユノでいて欲しくて

 

パパに頼んでテウンを殺そうとした僕

 

 

生き残ったテウンと母親の援助を懸命にしているユノを見て、もっとテウンが邪魔になって

 

母親にテウンを殺す気にさせた僕

 

 

 

そんな事しかできなかった僕より

 

貴方の心を開き、唯一無二の存在だと言わせるチャンミンの方が大切に決まってる

 

 

僕も、ユノにとってそんな存在になりたかった

 

でも・・・もう遅いんだね・・・

 

 

 

 

ミニョクは涙で霞むユノの胸にそっと頭を預けた

 

 

 

 

「ユノ、今までありがとう…ずっとずっと愛してる…」

 

 

 

そして、ユノの耳元で何かを囁いた

 

 

 

 

「ダメだっ!ミニョクっ!ユノの側を離れるんじゃないっ!」

 

 

だが、ミニョクはゆっくりと立ち上がると一歩ずつチソンに近づいて行った

 

 

「いい子だ。ユノもきっと喜ぶだろう」

 

 

「チソン…」

 

 

「なんだ?」

 

 

「僕はチャンミンが憎い…」

 

 

 

「だろうな…チャンミンが現れてから、ユノはお前から離れて行ったとボスからも聞いている」

 

 

「今だって庇いあって…」

 

 

「そうだな…美しいブロマンスを見せつけられたもんな…」

 

 

「だからチソン…」

 


 


 

 

 

「ユノの目の前で先にチャンミンを撃ち殺してっ!」

Hide & Seek | コメント:0 | トラックバック:0 |
| ホーム |次のページ>>